パターンブレイクという言葉はボルマン本にて登場しますが、別に彼独自の用語というわけでなく、各所で使われている言葉です(ブレイクアウトとも呼ばれる)。
パターンブレイクは、ライントレードやプライスアクショントレードを主に手法を構築しているトレーダーからすると、最もエントリーの根拠としてわかりやすいものだと思います。
そのパターンブレイクの中でも、ボルマン本では勝率の高いパターンをどう見分けるかについて記述しています。
以下、本記事で説明する「パターンブレイク」は、ボルマン本において仕掛けパターンと定義されているパターンブレイクを主体として取り上げます。
ボブ・ボルマン氏、アル・ブルックス氏ら本人による分析、トレード手法を学びたい方は、書籍をご確認ください。
パターンブレイクの特徴
そもそもパターンブレイクとは何か、特徴について簡単に説明します。
事前に何らかのパターンが形成されている
当然ですが、「パターン」を「ブレイク」するためには、事前に何らかのパターンが形成されていることが必要です。
パターンブレイク前に形成される主なパターン
■サポートライン、レジスタンスライン
幾度となく反発が生じている高値や安値のレートに引く水平線がサポートライン(支持線)やレジスタンスライン(抵抗線)です。
これらのラインを更新するようなレートが現れたらパターンブレイクとなります。
■ベアフラッグ、ブルフラッグ
複数の直近高値や安値が通過するような直線がベアフラッグとブルフラッグです。
これらのラインは最小2つの高値(安値)でも引くことができますが、より多くの足が関わっているほどそのラインの信用度(意識しているトレーダーの数)は増えていき、トレンドの強さとトレンド(パターン)ブレイク後の強さに影響すると考えられます。
■上記の複合系
- (例)レジスタンスライン+ベアフラッグ=アセンディングトライアングル
- ベアフラッグ+ブルフラッグ=保ち合い(ペナント)、y波動
- etc…
⇒たくさんありますが、基本は上記の4つ(水平線と斜め線)です。
ブレイク前にビルドアップが発生する
パターンラインに寄り添うような、ヒゲを含めても実体の小さい足が連続して続いている状態をビルドアップとボルマン本では定義しています。
このビルドアップが形成されていることが、このあとのパターンブレイクが決まる重要な要素の1つとなっています。
ビルドアップがパターンブレイクに及ぼす影響についてはビルドアップの項にて説明します。(作成中)
ビルドアップを伴わないパターンブレイク
ビルドアップを伴わないパターンブレイクは、厳密にはパターンブレイクが決まったというよりも、調整が続いていると解釈したほうがいいかもしれません。
高確率でトレンドラインへの復帰を目指す本線(トレンド方向)の動きが発生します。
ブレイクされるまで続いていたトレンドが完全に過去になるような、圧倒的なパターンブレイクであればその限りではないかもしれませんが、トレンドラインの始点にも及ばないレベルのブレイク幅である場合、基本的に反発が来るものと考えて仕掛けない、もしくはパターンブレイクプルバックを狙うことを視野に入れるのが最善と考えます。
EMA(移動平均線)とトレンドラインでできる隙間にレートが収まる
ボルマン本では、チャートに25EMA(25本指数平滑移動平均線)を表示させています。
ビルドアップが起こると、トレンドラインと25EMAの2本の線の内側に収まるようにローソク足が形成されていきます。
こうなると勝率が上がる……というものではありませんが(相場は何事も起こりうる)、ビルドアップが形成されている目安として利用できます。
他 パターンブレイクの特徴
パターンブレイクはロング、ショートどちらの仕掛けにも起こり得ます。
ロングとショートのどちらがブレイク後の継続時間が長いか……は、あまり深く考えないほうがいいと思います。
その理屈が通用するのは、おそらく株式などの「株券対通貨」であって「通貨対通貨」のFXは果たして…という感覚です(本当にそうかは要検証)。
パターンブレイクの仕掛けタイミング
トレンドラインをブレイクしそうな展開が生じたときに、じゃあどこで仕掛けるのかについて説明します。
シグナル足の高値(安値)を抜けたタイミングでの仕掛け
ボルマンさん推奨のタイミングです。
もちろんシグナル足の高値を上抜ける(安値を下抜ける)だけでなく、トレンドラインをブレイクしていることもポイントです(なぜかその点については言及が見受けられない)。
シグナル足や仕掛け足の考え方は、ブルックスさんと変わりません。
考えられるデメリット
足が引ける前に仕掛けることになるため、仕掛けた直後に逆行し、ティーズブレイクに引っかかる可能性があります。
無論そのための逆指値設定(損切り)ではありますが、リスクリワードレシオを高めるためにある程度の勝率が犠牲になる手法といえます。
後述の手法とどっちがいいか(自身に向いているか)はForex Testerなどで繰り返し検証して決めることをお勧めします。
トレンドラインをブレイクした足が引けたタイミング
ティーズブレイクにかかる可能性を少しでも減らそうとすると、ブレイクした足が引けるのを待つという手が考えられます。
仕掛け足がトレンドラインをブレイクし、そのままを維持して足が引けたのであれば、その瞬間同時間足を見ているトレーダーは「ブレイクした」と認識します。
また、下位時間足を見ているトレーダーは「すでにブレイクしている」と認識して仕掛けているかもしれません。
考えられるデメリット
トレンドライン近辺で引けてくれればいいものの、大きくブレイクして引けた場合リワードは小さくリスクが大きくなるため、絶好の仕掛けであったものを見送らざるを得なくなる可能性があります。
それでも構わず仕掛けたとして、それが失敗に終わると、その1回の負け分をリカバーするためにどれだけの勝率を維持しないといけないのか…と考えると、上記手法は一見ローリスクに見えてそうでもないかもしれません。
仕掛けるべきでないタイミング
一番やってはいけないとされる仕掛けタイミングが、「たぶんブレイクする」と見越して仕掛けることです。
これはビルドアップの存在や特徴を把握しておらず、ブレイクアウトの影響力を過大評価している人に見受けられる仕掛けタイミングだと思います。
たしかに、通貨ペアや状況によってはブレイクと同時に数十pipsの変動が起こることもあり、そのブレイクのスイングを端から端まで掴みたいと思う気持ちは分からなくありません。
しかし、明確にブレイクする前の仕掛けは、ビルドアップなどのちゃぶついた展開で損切りを余儀なくされ、その後のブレイクで手にしたリワードを帳消しにするリスクがあります。
帳消しにできればいいですが、結局ブレイクせず反転した暁には目も当てられません。
パターンブレイクの成功率が上がる要素について
ボルマン本のパターンブレイクの項に深く記載されているものではありませんが、自身の検証成果やブルックス本の考察と合わせることで考えられる、パターンブレイクの成功率アップの要素について説明します。
あまり意識しすぎると機会損失の可能性が上がるのでその点は要注意ですが、期待度の薄いパターンブレイクの見分けには役立つと考えます。
トレンド方向へのブレイクである
現状のトレンド方向にブレイクするほうが、必然的にパターンブレイクの成功率は上がります。
上図だと、右側のほうが売りを仕掛けるトレーダーが多いと考えられ(単中長期のどのタイプのベア派も仕掛けようと考える局面なため)、成功率は高くなると考えられます。
トレンドラインをブレイクしただけではトレンドが終了・転換したとはいえない……ということはブルックス本でも口酸っぱく書かれている文章ですね。
上図左側のようにブレイクの方向が従来続いてきたトレンドに逆らうものであれば要注意です(何かトレンド終了を感じさせる要素が事前にあればいいのですが……)。
ポール・フラッグ・スイングのスイングを狙う
最も典型的なトレンドフォローのパターンブレイクとして考えられるのが、ポール・フラッグ・スイングの「スイング」を想定した仕掛けです。
ポールとフラッグが形成されていることは上位時間足や、仕掛けるために見ている時間足チャートでも確認することができます。
最後のスイングの形成が想定できる場面で、ブルフラッグのビルドアップが確認できれば理想です。
逆方向への仕掛けが失敗したあとの仕掛け
ビルドアップの形成後にブレイクすると思いきや、反対側の仕掛けが上回り逆行することがあります。
上図はレジスタンスライン近辺でビルドアップが形成されたのち、ベア派の仕掛けが決まったかに見える下落が生じたものの、それが失敗に終わり反転足となった例です。
最後の足で仕掛けたベア派は利確するタイミングを失い、窮地に追いやられています。
そのタイミングでパターンブレイクが生じると、その展開を待っていたブル派の買いに、追いやられたベア派の買い戻しが加わりダブルの圧力が生じます。
一種の失敗ブレイクからのトレードに分類されるパターンですが、パターンブレイクにおける高勝率の1つとして覚えておきたいパターンです。
という噂もありますが、真意の程は確かではありません。
パターンブレイクの実例
過去のチャートからパターンブレイクと判断できる実例を見ていきたいと思います。
実例1:ウェッジでの下降トレンドラインパターンブレイク(EURUSD 5分足)
2017/10/16 EURUSD 5分足(M5)、ヒストリカルデータ:Dukascopy社データ
上図ポイント部分拡大(スマホユーザー向け)
最初の実例は、過去記事にて公開していたユーロドル5分足でのパターンブレイクです。
なお、過去記事では今回のパターンブレイクではなく、数本後の足(足6)をパターンブレイクプルバックとして紹介していましたが、改めて見直すとパターンブレイクとして仕掛けたほうがいいんじゃないか…?と思ったので今回取り上げたいと思います。
お読みの際はご注意ください。
仕掛け前のトレンドはやや下向きの流れと見受けられますが、足3の安値が足1の安値に対して安値切り上げになっており、下降トレンドラインと合わせてウェッジを形成していることから、形成はレンジ寄りの相場であることが伺えます。
また、足3の安値が足2の安値に対してほぼ同じレートで反発しており、ブレイクを期待して売ったベア派が足4で追い込まれた(もしくは損切りを強いられた)という前提があることが伺えます。
足4の急な上昇で下降トレンドラインに到達した後、わずか2本ではありますがビルドアップ足が形成され、そして足5でトレンドラインをブレイクしました。仕掛けとしてはラインをブレイクしたまま引けたことを確認してから仕掛けたいところです。
逆指値は、勝率を重視するなら足3の安値の少し下あたり、リワード重視で攻めるなら、足5の1本前の足の安値の下あたりに置きます。
もし足5で仕掛けられなかったとしても、足5の次の足が陰線ながらパターンブレイクコンビのパターン足を形成しています(陽線ならなお良かった)。この足5の次の足が引けたところで仕掛けるのもアリだと考えます。
仕掛け後はトレンドライン近辺でビルドアップが続いた形となりました。足6以降でついにベア派が折れた感じで、足6で仕掛けるのはパターンブレイクプルバックの仕掛けともいえそうです(シグナル足が実体の大きめの陰線なのが玉にキズですが……)。足6の次の足で仕掛けるほうがまだキレイかもしれません。
2017/10/16 EURUSD 5分足(M5)、ヒストリカルデータ:Dukascopy社データ
上図ポイント部分拡大(スマホユーザー向け)
利確に関してですが、1回目の利確ポイントは足7で、安値2の足となったタイミングと考えます。ここで半分くらい利確して、残りのポジションは逆指値を建値に置いて引っ張ります。
2回目は、安値2からの調整が起こらず一気に上昇して大陽線となった足8の引けのタイミングも理想的な利確ポイントと考えます。
足8での利確で20pips強の含み益となるため、もし逆指値を足5の1本前の足の安値の下に置いてロットを多めに仕掛けたのであれば、それなりのリワードとなっているはずです(足3の下だとRR2.0くらい)。
後は安値3となった足9なども候補ですが、一部ポジションは残して引っ張り続ける手も考えられます。その場合は上位時間足やサイクルなども考慮して判断することをオススメします。
5分足だけでトレードを完結させたい場合、足7, 8, 9のうち2箇所か3箇所で部分利確してポジションを手仕舞えられれば、いい取引だったと考えます。
さいごに
絶対にしてはいけないのは、ボルマン本や本記事を読んで早速マーケットでトレードを行うことです。
知識のインプットと手法のアウトプットは全くの別物です。
分かっているはずなのにうまくいかない……ということに気付かされる頃には、資産の一部を失ってしまうことでしょう。
どれだけ文章に重要な要素を記述しても伝わりきらない要素は山程あり、この記事にしてもボルマン本で伝えたいことの一部しかなく、またボルマン本もボルマンさんが伝えたいエッセンスの一部しか表現できてないと思います。
その文章だけではインプットできない知識・スキルを手に入れるには、分析と検証を行うことが必須です。
私は、分析はMT4でできると思いますが、検証を行うにはForex Testerを使うのが最高の方法の1つだと思っています(他にもあると思いますが)。
Forex Testerで検証中の画面
まずは完成されたチャートから仕掛けられたであろうパターンブレイクのエントリータイミングを見つけ出し(これはMT4等でも構いません)、その後にForex Testerを使用して動きのある中で「実際にエントリーできるか?」を体感すると、案外難しいと認識できると思います。
「案外難しい」が「なんか成功率上がってきた」となるまではある程度時間を要するかもしれませんが、その領域に至るまでに得た「文章で表現できない感覚やスキル」こそが何よりも重要だと考えます。
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