ダブルの圧力は、ブルックス本ではなくボルマン本で頻繁に登場するワードです。
特に5分足でスキャルピングやデイトレードを行う際は、このダブルの圧力が生じるタイミングを見つけて仕掛けることこそが仕事であると言っても過言ではありません。
本記事では、「ダブルの圧力」発生時に仕掛けることのメリット、ダブルの圧力が発生しやすいタイミングと、そのタイミングからどのような仕掛けパターンがあるかについて考察しています。
内容の一部はボルマン本(FX5分足スキャルピング)に沿った、復習に近いものになっています。もしまだ手元に本がない方は、是非一度手にとって読んで頂ければ理解がより深まると思います。
冒頭で「5分足」と書きましたが、本内容は15分足や1時間足、4時間足といった別時間足でも通用する手法であると考えます(ただ、「ビジネスとしての投機」という側面を考えたら、5分足が適切なのかもしれない)。
自身がトレードしたいと思っている通貨ペア、時間足から本記事のようなパターンを見つけ、是非トレードに活かしてほしいと思います。
ダブルの圧力 概要
「ダブルの圧力」とは?
まず「圧力」から説明します。
ボルマン本で言われている「圧力」というのは、一方(ブル派やベア派)が自分の思惑の方向にレートが進むことを予想し、注文が殺到している状態を指します。
ブル派なら買い注文、ベア派なら売り注文をかけている状態です。
通常時(単独の圧力)は、それぞれがそれぞれの思惑に合わせて圧力を掛け合っているため、結果的にランダムウォークの動きが生み出されやすく、方向性のない相場となる可能性が高くなります(下図の(a)、大半がこの状態)。
しかし、これがダブルの圧力(上図の(b))となると少し話が変わります。
例えば上方向へのダブルの圧力の場合、ブル派は思惑通りの買い注文をかけているのに対し、ベア派は買い戻し(=決済、損切り)をかけている状態を指します。
ブル派とベア派のトレードへの意図は全く逆ですが(利確のブル派と、損切りのベア派)、両方とも上昇を促すトレードを行っており、結果的にレートは大きく上昇する…
これがいわゆるダブルの圧力が発生している状態となります。
それぞれのイメージ
→わずかな圧力の強さの違いで値動きが発生する=方向性がなくランダムウォークの相場を生む
→強い上昇の相場が形成される
または
→強い下落の相場が形成される
「ダブルの圧力」で仕掛けるメリット
ダブルの圧力が発生したタイミングで仕掛けるということは、ブル派とベア派の双方が同じ方向へ動くと想定したタイミングで仕掛けることを意味します。
例えば買いを仕掛けたい場合、同じように買いを仕掛けるブル派と、売りポジションを手放す(=買い戻す)ベア派がいるタイミングで仕掛けることになります。
そのため双方のうちどちらかが考えを反転させるまでは思惑通りに動く可能性が高くなり、この間にトレードを仕掛けることで勝率・リワードともに良い結果になることが期待できます。
理想的な仕掛けのイメージ
ダブルの圧力が発生しやすいパターン
ダブルの圧力が発生する前には、典型的なセットアップが複数存在します。
ボルマン本で書かれているパターンは概ねすべて「ダブルの圧力を狙った仕掛け」と言っても過言ではありません。
- パターンブレイク
- パターンブレイクプルバック
- パターンブレイクコンビ
- プルバックの反転
- 失敗ブレイクからのトレード
これらのパターンはすべてダブルの圧力が発生しやすいパターンといえます。
これらの中でも特に代表的な3つのパターン(パターンブレイク、パターンブレイクコンビ、失敗ブレイクからのトレード)について取り上げます。
ビルドアップ→ブレイク時の仕掛け(パターンブレイク)
※EURUSD、5分足
トレンドライン近辺で値動きが小さくまとまる、いわゆる「ビルドアップ」が発生してからトレンドラインをブレイクするタイミングでダブルの圧力が発生しやすくなります。
ボルマン本ではこのパターンのことを「パターンブレイク」と呼んでいます。
ビルドアップが発生している時、一方はトレンドラインをブレイクすることを期待し仕掛けを待ち(積極的なトレーダーは仕掛ける)、また一方はトレンドが継続することを想定し行く末を見守っています(こちらも積極的なトレーダーは仕掛けている)。
ビルドアップが長くなればなるほどそれぞれの派閥の数(市場参加者)が増していきます。ブレイクすると思って仕掛けるブレイク派と、トレンド継続派の派閥の一部が互いに増し玉を行うことで相場は拮抗し、ブレイク時には片方が降り、もう片方がさらに仕掛けるため、ダブルの圧力はより強固なものとなります。
そのため、ビルドアップの長さはそのあとのダブルの圧力の強さとある程度相関を持つと考えられます(具体的な相関については通貨ペアごとで要検証)。
レンジ相場が長く続けば続くほどブレイク時の勢いが強い…という一般にある通説も、このような要因であることが伺えます。
パターンブレイクからコンビセットアップ形成後の仕掛け(パターンブレイクコンビ)
パターンブレイク後、ブレイクの反対側の勢力がまだ衰えてないがゆえに発生するコンビセットアップ足の形成後に生じるダブルの圧力があります。
ボルマン本ではこのパターンのことを「パターンブレイクコンビ」と呼んでいます。
上図が例で、基本的には1本目かその前の足でトレンドラインをブレイクし、その後にコンビセットアップ足(2本目の足)が出現します。
セットアップ後に、再び一方が仕掛け高値(安値)をブレイクしたことを機に一方が降りる形となるため、ダブルの圧力を生じさせます。
ブルックス本では「ミクロダブルトップ」などがコンビ足の例として挙げられています。
ボルマン本のパターンブレイクコンビはブレイク直後に発生することを想定した内容であるのに対し、ミクロダブルトップはワンレッグ or ツーレッグの上昇レッグが発生した後に生じるローソク足パターンとして説明している傾向があります。
本質的には同じようなダブルの圧力を狙った仕掛けパターンと考えます。
ブレイクの失敗からの仕掛け(ティーズブレイク→失敗ブレイクからのトレード)
※EURUSD、5分足
パターンブレイクがそのまま想定通りに進めばいいですが、推進側(下落ならベア派側)で思ったほどの同意が得られず、ブレイクが失敗に終わる場合もあります。
ティーズブレイクと呼ばれるこの現象が生じると、逆方向(下落のブレイクが失敗した場合上方向)にダブルの圧力の発生チャンスが訪れます。
これをボルマン本では「失敗ブレイクからのトレード」と呼んでいます。本では失敗ブレイクからのトレードについて具体的に「ダブルの圧力が発生している」ことの言及はあまり見受けられませんが、実質ダブルの圧力を利用したトレードと考えるのが本筋と考えられます。
1回目のブレイクが成功すると思って売ったベア派は、それが失敗に終わったと何らかの基準で判断し(上図だと、下降トレンドラインをブレイクしたところ)、損切り(買い戻し)を行います。
ベア派の損切りのタイミングとブル派の仕掛けタイミングが重なればダブルの圧力が形成されます。
ここで気をつけたいのは、1回目のブレイク時に思ったよりもベア派が仕掛けてなかった場合、損切りするベア派がそれほどいないことになるため、その場合の失敗ブレイクからのトレードはダブルの圧力ではなく、ブル派一方だけの買い圧力となります。
それでもうまくいくこともあるかと思いますが、ダブルの圧力のパターンと比べれば勝率は劣ると考えられます。
ダブルの圧力を利用した仕掛け
ダブルの圧力が発生しやすいパターンにて概要は説明しましたが、この項ではもう少し具体的な仕掛けについて考えたいと思います。
ブルフラッグにおけるビルドアップからのブレイク(パターンブレイク)
ブルフラッグ(下降トレンド)の終了を示唆するようなビルドアップが生じた後のブレイク時の仕掛けです。
ブレイクアウト手法としては最もオーソドックスなパターンの1つで、ダブルの圧力を意識してない人も無意識的に仕掛けていることが多いと考えられます。
このパターンで仕掛ける場合に気をつけたいのは、仕掛ける方向が上位時間足で確認できるトレンド方向と一致しているかどうかです(下図)。トレンドがあるとより勝率は高くなると考えられます。
継続的な下降トレンドの中でブルフラッグブレイクの度に買いを仕掛けていると、多数派のベア派の餌食になる可能性が極めて高いため、本手法での仕掛けはおすすめできません(下図)。
下降トレンドにおけるパターンブレイク時は、ブレイク後のプルバックを確認し、パターンブレイクプルバックで仕掛けることを視野に入れたほうが、無駄な損失を減らせると考えられます(下図)。
ティーズブレイクからの売り(失敗ブレイクからのトレード)
アセンディングトライアングルから上方向にブレイクし、そのまま上昇すると思ったもののそれが失敗に終わったところ(ティーズブレイク)からセットアップが始まります。
仕掛けのタイミングは、
- ティーズブレイクとなった足の安値を下回ったタイミング(下図(a)、やや積極的)
- ベアフラッグ(上昇トレンドライン)のブレイク後(下図(b)、よくある仕掛け)
- 足の引けのタイミング(下図(c)、やや慎重)
など、ブレイクで仕掛けたブル派が売り戻しを仕掛けそうなタイミングは複数考えられるため、検証を行ったのち実践することを推奨します。
足1:レジスタンスラインの明確なブレイク→失速して上影陰線で引けた足
足2:足1のブレイクがティーズブレイクとなるような継続の下落から上昇トレンドラインのブレイク
足3:足1やその前に仕掛けたブル派が降り、ベア派が仕掛けたことによるダブルの圧力形成の弱気の陰線形成
少なくとも、意識されてそうなレジスタンスラインよりレートが上にいる時点で売りを仕掛けるのは控えたほうがいいと考えます(まだティーズブレイクと断定するのは早いため)。
逆指値はティーズブレイクとなった足の高値の少し上に置くことで、失敗ブレイクからのトレードが失敗に終わる、いわゆる「ダマシのダマシ」に対応する方法がもっともオーソドックスと考えます(下図)。
ダブルトップの高値切り上げ失敗(ダマシの高値)後の仕掛け(≒失敗ブレイクからのトレード)
ダブルトップの右肩が左肩の高値を更新し、いわゆるダウ理論的解釈で高値切り上げとなった直後に反転し、ダブルトップが形成されそうなタイミングで仕掛けるパターンです。
ダブルトップの右肩付近で仕掛けるとなるとかなりの逆張りトレードに見えますが、上位時間足で下降トレンドが確認できる中で、かつトレンドライン近辺で今回のようなパターンが発生したのであれば(下図)、トレンド方向への順張りトレードと解釈できます(ちょうど仕掛けが調整のツーレッグにおける安値2の足になる)。それなりの勝率と高いリワードが期待できます。
逆指値も高値の少し上に置くという考えやすいパターンでよいため、ロット数の調整も容易です。
まとめ
ダブルの圧力という概念を知っているか否かで、トレードに対する考え方は大きく変わってきます。
闇雲にブレイクする度に仕掛け、そして失敗する理由は、片方だけの力に頼って仕掛けるからです。
マーケットに参加している自身と逆方向に仕掛けようとしているトレーダー(仕掛けたトレーダー)が失敗し、行き場を失って諦めるタイミングで仕掛けることを意識することで、勝率もリワードも大きく改善されると考えます。
そのような意識でトレードしていると、今度は逆に自身が失敗した際に何の躊躇もなく損切りできるようにもなると考えられます。
しかしながら、このダブルの圧力は完成されたチャートからはわりと確認できますが(とりあえずトレンドラインを引いて大きく動いた所を細かくチェックするとダブルの圧力を感じることができると思います)、リアルタイムでチャートを見ながら発生直前時に見つけるのは非常に難しいです。
いきなり実践と称してマーケットに参加しても、なかなか安定してダブルの圧力で仕掛けるのは困難です。
無駄に資産を失わないようにするためにも、まずはForex Tester等の検証ソフトを用いて何度も研鑽を重ねることを強く推奨します。
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