バーブワイヤー基本編では、ブルックス本で説明されている「バーブワイヤー」において、良くあるとされるパターンについて紹介しました。
本記事では、基本編のようなパターンの他に起こりうるその他のパターンについて紹介し、ブル・ベアがどのような行動を取るかを考察しています。
パターン1:1回目のブレイクがそのまま成功する
基本編(下図)では、意識されているレジスタンスラインを足1でブレイクしたあと、そのブレイクがダマシとなり下落しました。
本パターン(下図)では、足1はレジスタンスラインを超えたまま引けた陽線となっています。
パターン1の全体の流れ
足1
足1がどう引けるかは時間のズレの問題のため、陽線で引けようが上影陰線で引けようがそれほど差はないと考えます(ただ陽線の方がブル派にとって印象は良く見えるかもしれない)。
足1で高値をつけてから反発して陰線で引けたのが基本編、足1で高値をつけたタイミングで引けを迎え、足2が寄り付いてから反発したのが今回のパターンです。
足2
足2では基本編と同様に、ベア派の反発と前もって仕掛けていたブル派の利確があったことを伺わせる押しが、下ヒゲから確認できます。
足2は一時は大陰線(2バー・リバーサル)となり、ブレイクが失敗したように見える展開だったかもしれません。しかし、足1の安値に到達する目前でブル派がベア派を上回る勢いで盛り返し、終わってみれば下影陽線で引けています。
このようなパターンになった場合、足2で仕掛けたベア派は利確ができず、含み損を抱えて追い詰められています。
彼らベア派がポジションを手仕舞いするタイミングとして考えられるのは、足2の高値ブレイク時となります。
一方、足1や足2で仕掛けているブル派は、足2の高値を利確ポイントとしておらず、ブレイクが成功し目標値に達するまでホールドしようと考えるのが普通のため、足2が引けた後もポジションを保有し続けます。
足3
足3が寄り付き、足2の高値を上回ったところがベア派の逃げ場となりました。
ベア派は降りて買い戻し、ブレイクが成功したと考えたブル派はさらに買い注文を行います。
ダブルの圧力を得た足3は、ブル派が主導権を握ったまま上昇していった…というパターンです。
なお、足1と足2は、ボルマン本でいう「コンビセットアップ足」の一種です。
足2の詳細な考察
寄り付き直後
寄り付き直後からレジスタンスラインを下抜けした時点では、ベア派の売りと一部のブル派の利確が優勢で、陰線を形成していきます。
足1が引けた時点で下落「し始める」要因としては、ベア派が売りを仕掛けた結果よりもブル派が売り戻しを行った結果のほうが濃いのではないかと考えます。
ブル派
ベア派
バーブワイヤーからレジスタンスラインを上抜けした時点で「この初動はダマシ」と考えて売るベア派もいるかも知れませんが、足1が陽線として引けているためここで売りを仕掛けるのはなかなか至難の業です。
ただどちらであれ、下落してレジスタンスラインを下抜けした時点では、ベア派の売りが徐々に増していったと考えられます。
やがて足2の最安値に到達しますが、その時のイメージ図が下図です。
ベア派
基本編はこのままベア派がブル派を上回り、サポートラインに向けて下落していきました。
しかし、今回の場合は強気のブル派が足1の安値近辺でひたすら買い続け、足1の安値をブレイクさせてくれません。
(ファンド)
ベア派
(ファンド)
ベア派の売りの勢いが徐々に失われ、売るのを止め始めるとブル派が巻き返し、安値がヒゲとなって表れます(下図)。
慎重だったブル派も「足1のブレイクが成功しそう」と見るやいなや、ここまで様子見だったトレーダーも巻き込みさらに買い増しが行われます。
イメージとしてはパターンブレイクプルバックの波動で、初動(足1)からプルバック(足2の安値までの押し)が完了し、第二波を狙っていく形です。
そして最終的に足2は陽線の十字足として引け、足1と合わせてコンビセットアップ足を形成しました。
ブル派
ベア派
ブル派
このコンビセットアップ足パターンが「セットアップ」と呼ばれる所以は、足2で含み損を抱えたベア派が足3で損切りすることでダブルの圧力が起こる可能性が高まることを示唆しているから、と考えるのが最も妥当だと考えます。
ボルマン本ではそのあたりの詳細な説明はあまり見受けられませんでしたが(もしかしたら書いてある?)、コンビセットアップ足の本質は以上のようなものと考えます。
足3の寄り付き以降
足2のベア派の仕掛けが失敗に終わると、行き場を失ったベア派は逃げ場を探し始めます。
最も妥当な逃げ場は、足2の高値を上回る展開がきた瞬間です。足3の高値がダマシの高値になる可能性を期待して持ち続けるのは、少しリスクが高いと考えます。
足3が寄り付き、割と早いうちに足2の高値を上回る展開は訪れるでしょう(下図)。
ここでベア派は降り、ブル派が更に仕掛けることで均衡が破れ、ダブルの圧力が発生します。
そして本例では最終的に大陽線が形成されました。
以降どこまで上昇が続くかはわかりませんが、最後のブル派の買いが終わるまで相場は上昇し続けます。
また、反転を期待して売ったベア派が上昇の最中で仕掛け、そして損切りを繰り返してくれればくれるほど相場は上昇し続けます。
これが、バーブワイヤーにおいて初動がダマシとならずブレイクが成功するパターン例です。
パターン2:失敗ブレイクがダマシになるパターン(ダマシのダマシ)
応用編もう一つのパターンは、初動が失敗に終わり、足2が引けるまでは基本編と同じなのですが、足2以降のベア派の仕掛けも失敗に終わるというパターンです(下図)。
通称「ダマシのダマシ」とも呼ばれ、バーブワイヤーに関わらず多くのトレード機会で登場します。
足1のブレイクで仕掛けたブル派が足2で損切りし、足2や足3で売ったベア派は足4で損切り(もしくは含み損を抱えたまま保持)するため、つくづく勝者はいません。
足1の高値で売って足3の安値で利食いしたトレーダーが唯一の勝者となりますが、果たしてそんなことは可能かは想像に難くありません。
足2以降の詳細な考察
足1のブレイクが失敗に終わったことでブル派が仕掛けるのを止め、そしてベア派が仕掛けるため、相場はサポートラインへ向けて下落を開始します。
ベア派
ブル派の損切りゾーンとして、サポートラインを明確にブレイクしたタイミングが第一候補です。もしかしたら足1の安値で損切りするブル派もいるかも知れませんが、大方のブル派の損切りはサポートラインブレイク近辺に殺到すると考えます。
足2ではサポートラインをブレイクし、最安値では下図のようなローソク足を形成しています。引けの手前で少し戻しヒゲをつけましたが、本例ではサポートラインをブレイクしたまま引けています。
ただ、使用しているチャートやブローカーによってはもしかしたらまだブレイクしてないように見えるところもあるかもしれません。
ローソク足に使用するレートは売値(Bid)なのか高値(Ask)なのかによっても変わりますし、スプレッドの大きさによってサポートラインが数pipsズレるからです。
足3のブレイクと失敗
とはいえ、足3では、概ねどの世界のどのブローカーのチャートでも「明確にブレイクした」と解釈できるであろうレベルまで下落しています。
足3が最安値を記録したときのチャートが下図です。
ベア派
ブル派
ここまで来るとどう見ても上抜けがダマシのブレイクで、それをきっかけに下方向へのブレイクが決まったかのように見えます。
しかしなぜか今回に関しては失敗に終わり、これ以降相場は下落しませんでした。
レートは徐々にサポートラインへプルバックしていき、引けを迎える頃には十字足を形成しています。もしかしたら、一時的には陽線になっていたかも知れません。
そして足4は早々にサポートラインを上抜けし(下図)、足3の高値も更新したことで、ベア派の買い戻しが殺到、再びレートはトレーディングレンジの中に収まりました。
ダマシの仕掛けが「ダマシ」になった原因について
原因1:バーブワイヤー形成前のトレンドがアップトレンドだった
バーブワイヤーがどのような経緯で持って形成されたかは、ブレイクの成否に大きく関わると考えます。
例えば、今回のバーブワイヤーが、上昇トレンドにおけるポールフラッグスイングの「フラッグ」の部分で形成されたとすると、トレンドは次の「スイングに向けた上方向へのブレイクへのビルドアップパターン」へ向かっていたと考えられます(下図)。
バーブワイヤーの部分だけに注目すると方向感のない、どっちに転んでも不思議でない展開に見えます。しかし、上位時間足やバーブワイヤー形成前のトレンドを確認することで、デイトレーダーやスイングトレーダーの目線が確認でき、「トレンド的には上方向へのブレイクのほうが成功確率が高い」と考えることができます。
※表示しているローソク足の時間足について特に指定していませんでしたが、上記の考え方は図のローソク足を「5分足」や「15分足」として見た場合の考え方です。
原因2:ベア派の同意が得られなかった
「下抜けのブレイクが成功する」と判断して仕掛けたベア派が少なく(理由は、原因1のようなものや時刻的な問題など)、思っていたほどの圧力をかけられなかったという原因です。
ベア派
ベア派
原因3:熱心に買うブル派が多くいた
ダブルの圧力を得るには、含み損を抱えたブル派が売り戻し(損切り)を行うことが条件に含まれます。
今回のようなパターンの場合、損切りを行ったブル派も当然ながらいるとは思いますが、それ以上にここを底と断言して買い続けた、もしくはここを底にするために買い続けた熱心な機関投資家のブル派が多くいたことが考えられます。
(ファンド)
ベア派
ブル派
(ファンド)
ベア派
(ファンド)
熱心に買い続けるだけの根拠はなにかと考えると、やはり原因1に起因するような根拠があったと考えるのが妥当です。
原因4:なんらかの偶然が加わった
片方の通貨に大きな影響力をもたらすような要人発言や指標発表があった、などのファンダメンタルズ的要因、ブル派やベア派側の誤発注など、その時限定と言わざるを得ないようなことが生じたというものです。
これに関しては深く考察する必要がないため、割愛します(偶然はどう考察しても偶然の域を出ない)。
足4以降の展開について
再びトレーディングレンジ内を推移する
ブル・ベア双方が再び拮抗し、トレーディングレンジの中を推移するパターンです。
ブル派
ベア派
足1のブレイク時よりも市場参加者が増えている可能性が高く、次のブレイク成功時はより大きな上昇(下落)となることが予想されます。
ダマシのダマシ後のブレイク
下方向へのブレイクがダマシとなり、ベア派の損切りとブル派の仕掛けが上方向へのダブルの圧力を生み出して一気に上昇するパターンです。
ダマシのダマシで仕掛けることをプランに入れている人は成功するかもしれませんが、2回のダマシの両方で仕掛けたトレーダーはこの時点で往復ビンタ(2回連続損切り)を食らっているため仕掛けられず、見送るだけになる可能性があります(一番最悪のパターン)。
ブル派
ベア派
ブル派
バーブワイヤーにおける売買戦略について
基本編、応用編で合わせて3種類のバーブワイヤー後のパターンについて考察しました。
以上を踏まえた上でバーブワイヤーにおける基本的な戦略について考えたいと思います。
「バーブワイヤーは捨てる」という考えを除いた場合、考えられるのは以下の3パターンです。
戦略1:初動は捨てて、失敗ブレイクのトレード、パターンブレイクプルバックを狙う
本記事の例は全て「レジスタンスラインのブレイク」が初動となっています。
この初動に関しては仕掛けを見送り、次に起こりうるであろう上抜け失敗後の下抜け(売り)か、プルバック後の再反転後に仕掛ける(買い)戦略です。
「バーブワイヤー時の初動はダマシになりやすい」という傾向を利用した考え方で、損切りをできるだけ減らすことを目的としています。
戦略2:ブレイクの度に仕掛ける
これはブルックス本に近い考え方ですが、まず足1で買いを仕掛けると同時に足1の安値やサポートラインの下あたりで売りの逆指値注文を入れる(同時に買いポジションは損切りする)という戦略です。
上図のような展開になった場合、足1での仕掛けは損切りになりますが、その後の失敗ブレイクのトレードの流れに乗ることはできます。
ただし、ダマシの仕掛けがダマシになった場合は2連敗することになるリスクが伴います。
戦略3:ダマシのダマシのみ仕掛ける
極力無駄な損切りを控える方法として考えられるのがこの戦略です。上図でいうと、足4やその後の足で買いを仕掛けるような戦略です。
トレーディングレンジにおけるブレイクを狙うのは低勝率なので仕掛けないと割り切り、よりダブルの圧力が生じる確率が高くなる展開を待ってから仕掛けようという方針です。
この戦略はおそらく幾度となく機会損失が生まれると考えられるので、多くの鍛錬を必要とする戦略といえます(他の戦略が鍛錬を必要としないと言っているわけではない)。
さいごに
もちろん本記事以外で挙げた展開以外のパターンも起こり得ます。その場面ごとの1人の判断の変化、参加の有無によって結果は変動するからです。
ただ、バーブワイヤーの基本的なパターンとしては一発目のブレイクが成功する可能性が低く、ブレイクがダマシになったあとに仕掛けることを念頭に置いてトレードするほうが無駄に資産を減らさずに済むと考えられます。
バーブワイヤーのより詳細な内容についてはブルックス本(プライスアクショントレード入門)にて記載されていますので、そちらをご確認ください。
また、「ダブルの圧力」に関する概念や「コンビセットアップ足」などはボルマン本(FX5分足スキャルピング)にて掲載されていますので、気になる方はそちらを確認ください:
基本はトレンド方向への仕掛けを待つべき
バーブワイヤーの有無に限らず、基本的には上位時間足や同時間足の過去のローソク足等で確認できるトレンドの方向へのシグナルに対して仕掛けることが、より高い勝率とリワードを得る最善の策だと考えます。
検証にはForex Testerを用いるなどしてチャートを分析するだけでなく、再生(巻き戻し)して何度も観察を行うことでトレード対象の通貨ペアのクセを掴むことが成功への第一歩です。
今回は1回目のブレイクが上方向の例だけを示していますが、もしトレンドが下降トレンドである場合、バーブワイヤー時の上抜けは「これから始まる下抜けへの前兆」と見て買うのを控え、ブル派の仕掛けが失敗に終わったと見るやいなや売りを仕掛けるほうが得策と考えます。
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